「本当のギムレット」
「本当のギムレット」 Gimlet今回のレシピ
ドライジン(タンカレー):1/2
ライムジュース(コーディアル):1/2
製法:ビルド
度数:20%前後
ギムレットに限らず、スタンダードのカクテルは、長い歴史の中で、いろんなバーテンダーの工夫を経て現在の形になっています。
それでも店ごと、バーテンダーごとに違いはあるのですから、例えば「本当のサイドカー」とか「本当のマティーニ」などと言うこと自体が無意味でしょう。
しかし、ギムレットに関しては、「本当のギムレット」という言い方に、何となく意味があるように思えるのは、レイモンド・チャンドラーの名作『長いお別れ』との関係があるからだと思います。
「ギムレットには早すぎる」(I suppose it's a bit too early for a gimlet)というセリフはあまりに有名ですが、私は残念ながらこの作品を読んでいないので、聞きかじりの情報で知ったかぶりの解説をするのは控えます。
ただ、ギムレットというとこの小説が出てきて、その中に「理想のギムレット」としてレシピが語られる場面があるために、そのレシピが「本当」のように、多くの人が思い込んでいるわけです。
客観的に言えば、「ある小説の中で紹介された一つのレシピ」に過ぎないのに。
しかし、それが深い思い入れを持って語り継がれることも、カクテルの不思議さ、奥深さかもしれません。
その「本当のギムレット」は、フレッシュのライムではなく、コーディアルのライムジュース(ライムを原料に作ったシロップ)を使うとされていて、そこまでなら、オーダーすれば、作ってくれるバーは意外にあるようです。
しかし、小説どおりの「理想」となると、このコーディアル・ライムが「ローズ社」のものということになるのですね(現在、ローズ社は買収されて消滅し、「ローズ」というブランドだけが残っているとのことですが)。
そして、そのローズのコーディアルは、日本には正式輸入されていないので、バーテンダーさんが個人的に入手しているバーでしか飲めないということになるようです。
すみません、説明が長くなりました。
先日、何回か行った博多のバーで、女性バーテンダーのHさんから、その「ローズのコーディアルを使ったギムレット」を勧められ、興味本位で飲んでみました。
日本では希少価値のローズのコーディアルは、何とペットボトル入りで、バーにはふさわしくない安物感がありました(笑)。
出てきた「ギムレット」ですが、Hさんの解釈で、小説ではロックスタイルでビルドで作ったのでは、という想定から、写真のようなスタイルです。
本来、氷も入れなかったのでは、と言われていましたが、さすがに現代のバーではそれでは飲みにくいので、氷は入っています。
肝心の味ですが、率直に言って相当甘いです。これでも現代向きに甘さ控えめで作ってあるとは思いますが、それでも甘いですね。
美味しいかどうか、という点で言えば、フレッシュライムを使う「普通のギムレット」の方がはるかに美味しいでしょうね。
ただ、由来を聞いたからか、古風な味の感じがして、なかなか楽しめました。
でも、『長いお別れ』に思い入れのある読者が、しみじみと味わうのならいいのですが、読者でもない私が飲んでいるのは、単に珍し物好きの好奇心でしかないですよね。
考えすぎかもしれませんが(カクテルは面白がって飲んでいればいい、というのも確かなので)。
ちなみに、現代の普通のギムレットの写真もどうぞ。

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